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シナモン、カシア、ニッキは何が違う? 植物・成分・呼び名で整理

公開:2026年10月11日

シナモン(セイロン)とカシアは別種の樹皮で、ニッキは日本のニッケイに由来する呼び名です。学名や部位、クマリンの量、日本と米国での呼ばれ方を公的機関や専門サイトの資料で整理し、ジンでの使われ方も紹介します。

目次

  1. シナモン、カシア、ニッキの違い(早見表)
  2. 違いは「木の種類」「成分」「呼び名」の3つにある
  3. 植物としての違い:別の種で、産地も樹皮の姿も異なる
  4. クマリンの量はカシアが桁違いに多く、機関は摂取量の目安を示している
  5. 呼び名の混乱:日本でも米国でも、「シナモン」の中にカシアが入る
  6. ニッキは、日本のニッケイに由来する呼び名
  7. ジンのボタニカルとして:樹皮が甘くて温かい層をつくる
  8. 見分け方と使い分けの目安

シナモン、カシア、ニッキの違い(早見表)

シナモン(セイロン)カシアニッキ
学名[1][2][3][4][5]Cinnamomum verum J.Presl(C. zeylanicum とも書かれる)Cinnamomum aromaticum Nees(Kew POWO の受け入れ名)。C. cassia の名も使われるCinnamomum sieboldii Meisn.(資料により別の学名もある)
科[1][2][3]クスノキ科クスノキ科クスノキ科
原産・主産地[1][6][2][7][3][5]スリランカ原産。南インド、マダガスカルでも生産南東中国からベトナム原産。商業栽培は中国とベトナム資料により異なる(POWO は南西諸島。インドシナ・中国南部とする百科事典もある)
使う部位[8][7][9][10][11]幹の樹皮幹の樹皮根の皮(近畿大の和ケイヒ)。樹皮とする辞書もある
樹皮の見た目[12][6][5]薄い層が何重にも巻く厚い樹皮が1重に巻く細い根を束ねたものを「にっき」と呼んだ(百科事典)
香り・味[8][7][11]甘く温かい。苦みや渋みはほとんどない(Katzer)わずかに苦く渋みがある(Katzer)香りと辛みがあり、和菓子に使われる(野田市)
クマリン(東京都の調査)[13][14][15]スパイスの平均13.7 ppm(2007年度)スパイスの平均3257.5 ppm(2007年度)原料は不明。製品は焼き八ッ橋40・81 ppm、ニッキ飴約4 ppm
日本での呼び名[16][4][10][11]セイロンシナモンカシア、シナニッケイ。生薬名は桂皮(ケイヒ)ニッケイ、肉桂。「ニッキ」は「にっけい」の音変化

違いは「木の種類」「成分」「呼び名」の3つにある

シナモンとカシアは、同じクスノキ属で別の種の木から取れる樹皮です。ニッキは日本での呼び名で、もとは日本に育つニッケイという木の根皮や樹皮を指す言葉です。違いは3つに分かれます。木の種類、含まれる成分(なかでもクマリンの量)、そして店頭や表示での呼ばれ方です。[6][11][9]

ジンの世界では、カシアもシナモンも樹皮のボタニカルとして使われます。ボンベイ・サファイアはカシア、グリーンフックはセイロンシナモンを使い、シップスミスは両方を加えています。ラベルに並ぶ「シナモン」と「カシア」は、別の素材の名前です。[17][18][19]

植物としての違い:別の種で、産地も樹皮の姿も異なる

一般に「シナモン」と区別されるのは、セイロンシナモンです。学名は Cinnamomum verum J.Presl で、Kew(王立植物園)の Plants of the World Online(POWO)は原産地をスリランカとしています。C. zeylanicum という名は、POWO では異名として扱われます。McCormick Science Institute は、主な産地としてスリランカ、南インド、マダガスカルを挙げています。[1][6]

カシアは、中国南部からベトナムにかけて原産の木です。POWO が受け入れている学名は Cinnamomum aromaticum Nees で、原産域を「南東中国からベトナム」と記しています。同じ木を Cinnamomum cassia と呼ぶ文献もあり、米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、C. aromaticum(別名 C. cassia)と併記しています。日本薬局方の生薬「ケイヒ(桂皮)」の基原は、C. cassia Blume の樹皮と、医薬基盤・健康・栄養研究所の資料にあります。[2][20][4]

カシアという言葉は、1種だけを指すとは限りません。McCormick Science Institute は、流通する主な種として、インドネシア産の C. burmannii、ベトナム産の C. loureirii、セイロン、中国産の C. cassia を挙げ、一部は「カシア」とも呼ばれると説明しています。同団体は、セイロンだけを「本物」とする売り方を「誤解を招く」と述べ、4種とも植物学上はシナモンに入るという立場です。[6]

樹皮は巻いて棒(クイル)にします。ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)によると、カシアのスティックは厚い樹皮が1重に巻かれ、セイロンのスティックは細い層が何重にも重なります。McCormick Science Institute も、セイロンは薄く何層にもなって砕けやすく、ベトナム産とインドネシア産は厚い1層で折れにくい、と書いています。[12][6]

味わいの記述は資料によって違います。Gernot Katzer のスパイス事典(Spice Pages)は、セイロンを「強く香り、甘く、温かく、苦みや渋みはほとんどない」、カシアを「わずかに苦く渋みがあり、シナモンの生き生きとした感じに欠ける」と書きます。McCormick Science Institute はセイロンを、穏やかな辛みにフルーティー、花、クローブを思わせる香りと表しています。[8][7][6]

クマリンの量はカシアが桁違いに多く、機関は摂取量の目安を示している

香りの主役は、どちらもシンナムアルデヒドです。ここまでは似ています。Katzer によれば、セイロンの樹皮から採った精油は、シンナムアルデヒド(65〜75%)とオイゲノールが主成分です。カシアの精油ではシンナムアルデヒドが75〜90%で、オイゲノールは痕跡程度です。[8][7]

差が大きいのはクマリンです。クマリンは天然の香り成分で、過剰にとると肝障害につながると、東京都の食品安全FAQは説明しています。東京都が2007年度に市販品を調べたところ、クマリンの平均はセイロンシナモンで13.7 ppm(10〜17 ppm)、カシアで3257.5 ppm(310〜6700 ppm)でした。資料は、カシアはセイロンの200倍以上と記しています。ppm は1kgあたりのミリグラム数に当たり、µg/g も同じ値です。BfR もカシアの平均を約3000 mg/kg、測定された最大を10000 mg/kg としています。[13][14][12]

欧州食品安全機関(EFSA)は2004年の意見で、クマリンの耐容一日摂取量(TDI)を、体重1kgあたり0〜0.1 mg(1日あたり)としました。根拠は犬の肝毒性試験です。影響が出なかった量は体重1kgあたり1日10 mg。ここに、種の違いと個人差の係数を各10、合わせて100をかけました。TDI は、毎日一生とり続けても健康に害がないとみなせる量の目安にあたります。[21][13]

BfR は2012年、平均的なクマリン含有量のカシアなら、体重60kgの成人では1日2g、体重15kgの子どもでは1日0.5gでTDIに達するという試算を示しました。東京都のFAQは、測定した平均値で計算し、体重50kgの人がTDIに達するのを、カシアで約1.5g、セイロンで約364.6gとしています。[16][13]

ただし、一律に避けるよう求めているわけではありません。BfR は、TDI をわずかに超える日が1〜2週間続いても安全と考えられるため、懸念は多量を長く食べ続ける場合に限る、との見解です。スパイスとして多く使う人には、クマリンの少ないセイロンを選ぶよう勧めています。厚生労働省の統合医療情報サイト(eJIM)が訳した NCCIH の解説も同じ方向です。通常の食べ方で深刻な量のクマリンをとることはほとんどありません。長期摂取は、肝疾患など感受性の高い人で問題になりうるとしています。[16][22]

これらはスパイス、菓子、サプリメントの調査から出た数字です。ジンに溶け出すクマリンの量を調べた資料は、今回の調べでは見つかりませんでした。[13]

呼び名の混乱:日本でも米国でも、「シナモン」の中にカシアが入る

日本食糧新聞は2024年8月、カネカサンスパイスのセイロンシナモン発売を伝える記事の中で、財務省の輸入統計をもとに、国内に流通するシナモンの約96%は、海外で「カシア」と呼ばれるもので、中国やベトナムの産だと伝えています。残る約4%が、スリランカ産のセイロンシナモンです。[23]

表示から種を読み取れないこともあります。東京都健康安全研究センターが2008年に報告した調査では、シナモンのサプリメント5製品のクマリン量が、「セイロン」表示の1製品で2,900 µg/g、「カシア」表示の3製品で2,300〜2,900 µg/g(平均2,500 µg/g)、種類の記載がない1製品で2,700 µg/g でした。論文は、セイロン表示や未記載の製品にもカシアが使われている可能性を否定できない、としています。[15]

日本語の名前は幅があります。カシアは「シナニッケイ」と呼ばれ、食品安全委員会が訳したBfRの情報にも「シナニッケイ(別名カシアシナモン)」とあります。生薬の名前は桂皮(ケイヒ)です。「肉桂」という言葉も広く、デジタル大辞泉は、肉桂(にっけい)をクスノキ属のニッケイ・シナモン・カシアなどの総称としても説明しています。[16][4][10]

米国では、NCCIH がカシアを「北米で最も多く売られている種類」と述べています。McCormick Science Institute は、cinnamon を「シナモン属(Cinnamomum)の常緑樹の乾燥した内樹皮」と定義し、カシアもその一つに数えます。[20][6]

ニッキは、日本のニッケイに由来する呼び名

ニッケイ(肉桂)は、Cinnamomum sieboldii Meisn. の学名をもつクスノキ科の常緑樹です。POWO はこの名を受け入れ名とし、原産域を南西諸島と記しています。ただし百科事典には、インドシナや中国南部の原産とする説があり、日本大百科全書は享保年間(1716〜1736年)に中国から渡来したと書いています。愛称がニッキです。千葉県野田市の植物カードは、ニッケイはセイロンニッケイより寒さに強く、和菓子によく使われたと説明し、江戸時代からスパイスや薬として栽培されてきたと書きます。語形については、デジタル大辞泉が、ニッキを「にっけい」の音変化としています。[3][11][10][5]

使う部位は、資料で説明が分かれます。近畿大学医学部の資料によると、ニッキと呼ばれるケイヒは、昭和40年代ころ(1965〜74年ごろ)まで日本で生産されていた和ケイヒ(和肉桂)のことです。香りの成分が地下の根皮にあるため、根皮だけが流通しました。一方、デジタル大辞泉はニッキを「ニッケイの、主に樹皮を乾燥したもの」とし、野田市は樹皮に香りと辛みがあると書きます。百科事典には、細い根を束ねたものを「にっき」と呼んだ、という記述もあります。[9][10][11][5]

学名の扱いは、資料で割れています。植物名辞典は、Cinnamomum okinawense(C. sieboldii と同じ)とし、ブリタニカ国際大百科事典は C. loureirii としています。C. loureirii は、McCormick Science Institute がベトナム産の種として挙げる名と同じです。本稿は、医薬基盤・健康・栄養研究所、野田市、POWO に共通する C. sieboldii を採りました。[10][5][6][4][11][3]

京都の八ッ橋は、ニッキの代表的な使い道です。聖護院八ッ橋総本店は、八ッ橋の誕生を元禄2年(1689年)とし、八ッ橋を「米粉と砂糖をあわせたものに、にっきで香りづけをしたお菓子」と定義しています。原料のにっきには「風味が豊かで刺激が少ないもの」を求めているそうです。[24]

今日の商品のニッキが何かは、表示から分かる範囲にとどまります。東京都の2007年度調査では、焼き八ッ橋の原材料表示は「桂皮末(ニッキ)」「ニッキ(桂皮末)」、生八ッ橋は「桂皮末(ニッキ)」「ニッキ(桂皮油)」など、桂皮と併記されていました。クマリンの量は、焼き八ッ橋で40 ppm と81 ppm、ニッキ飴で約4 ppm(4 µg/g)でした。表示された原料が国産ニッケイの根皮なのか、輸入の桂皮なのかは、今回調べた資料からは分かりません。[14][15]

ジンのボタニカルとして:樹皮が甘くて温かい層をつくる

Difford's Guide は、カシアをシナモンの仲間で、チャイニーズ・シナモンとも呼ばれるとし、ベトナム、中国、マダガスカルに育つ木の樹皮と書きます。ジンに加わる味は、ガム(デンティン)とシナモンを思わせ、ホットワインにやや近いそうです。シナモンのほうはスリランカ産で、ジンにスパイシーな切れ味を与えると説明されています。[25]

シップスミスの公式サイトは、甘いスパイスの層をつくる素材として、中国産のカシアとマダガスカル産のシナモンの2種類の樹皮を挙げています。同じ樹皮でも、産地の違う2つを並べて使う例です。[19]

ボンベイ・サファイアのカシアは、Difford's Guide によるとインドネシア産です。製造では、粉にしたカシアを、粒や皮のボタニカルより後にバスケットへ入れます。ザ・ボタニストも、Difford's Guide が挙げる定番の9種類に、カシアとシナモンが両方入っています。[17][26][27]

カシアの甘さを前に出す説明もあります。ヘルノ・ドライジンの公式サイトは、味わいを、コリアンダーの青くはじけるスパイスの風味に、バニラとカシアのまろやかな甘さが続くものと紹介しています。グリーンフックのシナモンは、Difford's Guide がセイロンシナモンとしています。[28][18]

見分け方と使い分けの目安

店頭でできる見分け方は、名前とスティックの巻き方です。パッケージに「セイロンシナモン」などと種が書かれていれば、セイロンと分かります。BfR は、粉末は見分けにくいが、セイロンは種名を明記する場合がある、と説明しています。スティックは、厚い樹皮が1重ならカシア、細い層が何重にも重なるならセイロンです。[12][6]

使い分けの目安は、機関の見解に沿うなら次の3点です。毎日たくさん使うなら、クマリンの少ないセイロン(BfR)。ふだんの料理や菓子の量なら、カシアも通常は問題になりにくい(厚生労働省 eJIM、東京都)。和菓子の「ニッキ」は、ニッケイに由来する言葉で、いまの表示では桂皮と併記される例がある、と覚えておけば足ります。[12][16][22][13][14]

ジンの場合、シナモンとカシアのどちらを使うかが蒸溜所の選択です。公式の説明に樹皮の名前があれば、甘いスパイスの出どころが分かります。[19][17][18]

よくある質問

シナモンとカシアは同じものですか?
同じクスノキ属の別種の樹皮です。セイロンシナモンは Cinnamomum verum、カシアは Kew POWO の受け入れ名では Cinnamomum aromaticum(C. cassia の名でも呼ばれます)。ただし米国の業界団体 McCormick Science Institute は、4種とも植物学上はシナモンに入るという立場です。
ニッキとシナモンは同じですか?
同じではありません。ニッキは日本のニッケイ(Cinnamomum sieboldii)に由来する呼び名です。近畿大学医学部の資料は、昭和40年代ころまで生産された和ケイヒの根皮を指すとし、辞書には樹皮とする説明もあります。いま売られている商品で「ニッキ」と表示される原料の種までは、今回調べた資料から分かりません。
クマリンが多いのはカシアとセイロンのどちらですか?
カシアです。東京都の2007年度の調査では、平均がセイロン13.7 ppm、カシア3257.5 ppm でした。EFSA は2004年にクマリンの TDI を体重1kgあたり0〜0.1 mg(1日あたり)としています。BfR は、スパイスとして多く使う人にはセイロンを勧める一方、懸念は多量を長く食べ続ける場合に限る、としています。
ジンに使われるのは、シナモンとカシアのどちらですか?
銘柄で違います。シップスミスは中国産カシアとマダガスカル産シナモンの両方、ボンベイ・サファイアはカシア、グリーンフックはセイロンシナモン(Difford's Guide)を使うと説明されています。

関連するボタニカル

この記事に出てくるジン

参考資料

  1. Kew Plants of the World Online(Cinnamomum verum)
  2. Kew Plants of the World Online(Cinnamomum aromaticum)
  3. Kew Plants of the World Online(Cinnamomum sieboldii)
  4. 医薬基盤・健康・栄養研究所
  5. コトバンク(ニッケイ・各種百科事典)
  6. McCormick Science Institute(Cinnamon)
  7. Gernot Katzer's Spice Pages(Cassia)
  8. Gernot Katzer's Spice Pages(Ceylon Cinnamon)
  9. 近畿大学医学部(桂皮)
  10. Weblio(デジタル大辞泉ほか・肉桂)
  11. 千葉県野田市(植物カード ニッケイ)
  12. ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)FAQ
  13. 東京都 食品安全FAQ(シナモン)
  14. 東京都 平成20年度 安全情報(シナモン含有食品中のクマリン)
  15. 東京都健康安全研究センター 研究年報 第59号(2008)
  16. 食品安全委員会(BfR 2012年意見の日本語要約)
  17. Difford's Guide
  18. Difford's Guide
  19. Sipsmith 公式
  20. 米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)
  21. 欧州食品安全機関(EFSA)Opinion related to Coumarin(2004)
  22. 厚生労働省 統合医療情報発信サイト eJIM(シナモン)
  23. 日本食糧新聞(2024年8月21日)
  24. 聖護院八ッ橋総本店(自社の説明)
  25. Difford's Guide(gin botanicals)
  26. Difford's Guide(Bombay 製法)
  27. Difford's Guide(The Botanist Islay Dry Gin)
  28. Hernö Gin 公式サイト(Hernö Dry Gin 製品ページ)

最終更新:2026-10-11 内容の誤りを知らせる

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