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カモミールChamomile

カモミールは、キク科のジャーマン・カモミールとローマン・カモミールを代表とする花のボタニカルです。熱に耐えて傷みにくく、乾かした花がジンにやわらかな花の香りと甘みを添えます。

カモミールの基本情報

学名Matricaria chamomilla L.(ジャーマン・カモミール。異名 M. recutita)、Chamaemelum nobile (L.) All.(ローマン・カモミール。異名 Anthemis nobilis)[1][2]
科キク科(Asteraceae)[1][2][3]
使う部位花。多くは保存のため乾燥させる[4][5]
主な産地原産はジャーマンがマカロネシア、北アフリカ、温帯ユーラシアからインドシナ、ローマンが西ヨーロッパから北西アフリカ。The Gin Guildはフランスとドイツを挙げる[1][2][4]
収穫期夏(The Gin Guild)[4]
香りの系統温かみのある花の香りと甘み(Gin Foundry)。リンゴにたとえられる香り(キュー王立植物園)[5][6]

目次

  1. 「カモミール」の代表は、属の違う2種です
  2. 名前の由来は「大地のリンゴ」
  3. ジンでは、熱に強い花として甘みとやわらかさを添えます
  4. Gin-Atlasの銘柄での使われ方
  5. 薬草としての来歴は古代までさかのぼります
  6. お茶やカクテルでの使い方と、体質への注意

「カモミール」の代表は、属の違う2種です

カモミールは、白い花びらと黄色い中心をもつ、デイジーによく似た花です。ジンの業界団体The Gin Guildは、カモミールを「デイジーに似たいくつかの植物の通称」と説明しています。代表は2種で、米国の国立補完統合衛生センター(NCCIH)も、ジャーマン・カモミールとローマン・カモミールの2種類を挙げています。[4][5][7]

英国のキュー王立植物園のデータベースPlants of the World Online(POWO)によると、ジャーマン・カモミールの学名はMatricaria chamomilla L.です。キク科の一年草で、異名にMatricaria recutita L.があります。自然の分布は、マカロネシアと北アフリカ、温帯ユーラシアからインドシナまで。南北アメリカやオーストラリアにも帰化しています。[1]

ローマン・カモミールは、同じPOWOでChamaemelum nobile (L.) All.です。やはりキク科で、一年草または二年草とされます。分布はアゾレス諸島と、西ヨーロッパから北西アフリカにかけて。国名ではフランス、英国、アイルランド、ポルトガル、スペイン、モロッコ、アルジェリアが並びます。古い学名はAnthemis nobilis L.です。玉川学園の植物解説は、両者は花が似ていても別の植物で、属名も違うと書いています。[2][3]

ジン向けの資料では、The Gin Guildのボタニカル一覧が学名にAnthemis nobilisを掲げています。POWOでいえば、ローマン・カモミールの異名です。同じ一覧によると、産地はフランスとドイツで、収穫は夏。手で摘むか、トラクターと熊手、刻み機を使って刈り取り、保存がきくように乾燥させます。[4][2]

名前の由来は「大地のリンゴ」

キュー王立植物園は、ローマン・カモミールを、地面をはうように広がる香りのよいハーブと紹介しています。つぶすとリンゴのような香りが立ち、名前はギリシア語の「大地のリンゴ」に由来するそうです。[6]

玉川学園の解説も、カモミール全般を「甘くリンゴのような香り」と書いています。ジンの資料にも同じたとえが出てきます。酒の専門サイトDifford's Guideは、ザ・ボタニストに使う島のボタニカルの一つにスイート・カモミール/ローマン・カモミール(Chamaemelum nobile/Anthemis nobilis)を挙げ、香りを「甘い、熟したリンゴ」と添えています。[3][8]

ジンでは、熱に強い花として甘みとやわらかさを添えます

ジン専門サイトGin Foundryによると、カモミールだけを蒸溜すると、温かみのある花の香りと甘みが出ます。性格は「やわらかく、みずみずしい」。熱いカモミールティーで味わうより、ずっと澄んで香り高いそうです。[5]

Gin Foundryがカモミールの大きな利点に挙げるのは、蒸溜に要る熱に耐えられることです。多くの繊細な花と違ってすぐに傷んだり腐ったりしないので、蒸溜家は香りを引き出しきれる。乾燥させたものならなおさらだそうです。スミレのように香りが消えてしまうことも、ラベンダーのように全体を支配することもない。そのためジンの中心にある香りを引き立て、やわらげる役に回れる、という説明です。[5]

同じ記事は、カモミールがはっきり感じられるジンとして、ブルーム ジン、タンカレー ナンバーテン、サイレントプールの3つを挙げています。[5]

Gin-Atlasの銘柄での使われ方

いちばん詳しく語られているのは、タンカレー ナンバーテンです。8種のボタニカルのうち、ジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカルート、リコリスの4種は通常のタンカレーと同じで、カモミールはオレンジ、ライム、グレープフルーツとともに加わる残りの4種の一つです。つくり方は二段階。Difford's Guideによると、二段目の大きな蒸溜器に、柑橘の原酒「シトラス・ハート」と小麦のニュートラルスピリッツ、伝統の4種、四つ割りにした生のライムと一緒に、カモミールの花を入れます。[9][10][11]

花の役目について、The Gin Guildは、カモミールの花がこのジンならではのビロードのような口当たりを生むと紹介しています。タンカレー自身は、香りを「酸味のきいたグレープフルーツと柑橘、ジュニパー、カモミールの花」と表現しています。ジャーマンとローマンのどちらを使うかは、これらの資料にはありません。[12][13]

種の名前まで資料に出てくるのは、ザ・ボタニスト アイラ ドライジンです。ただしメーカーの説明ではありません。前の節で触れたとおり、酒の専門サイトDifford's Guideによると、アイラ島で摘む22種の一つがローマン・カモミールです。レミー コアントローによると、島のボタニカルを摘むのは毎年3月から10月です。Difford's Guideは、この蒸溜所では葉や花びらのような繊細なボタニカルを袋に詰め、蒸溜器から冷却器へ蒸気を送る管の途中の小部屋に置く、とも書いています。[8][14]

サイレントプール ジンでは、公式サイトがラベンダー、ローズと並ぶ3つの花の一つにカモミールを挙げ、3つが「繊細に絡み合う」と書いています。ブランドの紹介でも、ジュニパーを軸にした味わいに、ラベンダーとカモミールの花の香りが重なるとされています。[15][16]

ヘンドリックス ジンでは、蒸溜する11種類の一つです。公式サイトのよくある質問は、キャラウェイやコリアンダー、エルダーフラワー、カモミール、柑橘の皮などが控えめに重なると説明しています。ドイツのフェルディナンズ ザール ドライジンは、酒類サイトabout-drinksのインタビューで挙がった素材にカモミールが入ります。スペインのアルケミスト ジンについては、酒の評価サイトDistillerが「2種類のカモミール」を使うと書いていますが、種の名前はありません。この3銘柄も、ジャーマンかローマンかは資料からはわかりません。[17][18][19][20]

薬草としての来歴は古代までさかのぼります

NCCIHによると、カモミールは古代の医学書に記され、古代の中国、エジプト、ギリシア、ローマで重要な薬草でした。Gin Foundryは、中世から喘息や疝痛(激しい腹痛)、胃のむかつきの手当てに使われてきたと書いています。[7][5]

英国では、庭の植物でもありました。キュー王立植物園によると、リンゴのような香りとクッションのような感触から、エリザベス朝の時代には芝生や腰掛けに好んで使われました。歯痛や腹痛、頭痛の昔ながらの手当てにも用いられたそうです。世界全体では低懸念とされていますが、グレートブリテンでは危急(Vulnerable)とされています。[6]

薬としての扱いは、2種で分かれます。玉川学園の解説によると、日本の生薬「カミツレ」はジャーマン・カモミールの頭状花を指します。花を蒸溜すると青い精油が得られ、その成分のアズレン、とくにカマズレンという化合物がうがい薬や軟膏に使われます。ローマン・カモミールの花については、欧州医薬品庁(EMA)が2012年1月にEUの植物性医薬品モノグラフを公表しており、対象は胃腸の不調です。[3][21]

お茶やカクテルでの使い方と、体質への注意

キュー王立植物園は、いまの使い道としてハーブティーやシャンプー、肌用の軟膏を挙げ、カモミールの浸出液はストレスをやわらげ眠りを助けるためによく飲まれる、と紹介しています。The Gin Guildも、ジン以外の用途にお茶、香水、食品業界を挙げています。カクテルでは、Gin Foundryが、白い泡が厚くのったジンのカクテルの飾りにしたり、ビーズ・ニーズの表面に浮かべたりする使い方を勧めています。[6][4][5]

安全面について、NCCIHは、お茶や食品に含まれる程度の量を口にするのは、おそらく安全だとしています。副作用はまれですが、吐き気やめまい、重いものを含むアレルギー反応が報告されています。ブタクサ、キク、マリーゴールド、デイジーなど近縁の植物にアレルギーのある人は、反応が出やすいそうです。ワルファリンなど一部の薬との相互作用の報告もあります。いずれも、主にジャーマン・カモミールを扱った2024年11月更新の資料の内容です。[7]

カモミールを使ったジン

参考資料

  1. Plants of the World Online(Royal Botanic Gardens, Kew)
  2. Plants of the World Online(Royal Botanic Gardens, Kew)
  3. 玉川学園
  4. The Gin Guild
  5. Gin Foundry
  6. Royal Botanic Gardens, Kew
  7. National Center for Complementary and Integrative Health(NIH)
  8. Difford's Guide(The Botanist Islay Dry Gin)
  9. Diageo Bar Academy(Diageo)
  10. Difford's Guide
  11. Boothby
  12. The Gin Guild
  13. Tanqueray(Diageo)
  14. Rémy Cointreau(所有会社・ブランドページ)
  15. Silent Pool Distillers 公式(ボタニカル)
  16. Silent Pool Gin ブランドサイト(製品)
  17. Hendrick's Gin(米国公式サイト)
  18. Hendrick's Gin(公式サイト FAQ)
  19. about-drinks(Ferdinand's インタビュー)
  20. Distiller
  21. European Medicines Agency