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グレープフルーツGrapefruit

グレープフルーツは18世紀のカリブ海で見つかった、ザボンとスイートオレンジの交雑から生まれた柑橘です。ジンには主に皮を使い、ほろ苦さと甘さをあわせ持つ明るい香りを加えます。

グレープフルーツの基本情報

学名Citrus × paradisi Macfad.(キュー王立植物園のPOWOは、スイートオレンジと同じCitrus × aurantium f. aurantiumの異名として扱う)[1][2]
科ミカン科(Rutaceae)[2]
使う部位主に皮。タンカレー ナンバーテンのように果実を丸ごと使う銘柄もある[3][4]
生まれザボンとスイートオレンジの交雑種。18世紀のバルバドスかジャマイカで生まれたとされる[5]
収穫期2月から5月(The Gin Guild)。米アリゾナ州の色つき品種は11月から5月[6][5]
香りの系統柑橘。香りと味の特徴をつくる成分はヌートカトン(米CDC)[7]

目次

  1. 植物としての基本
  2. 生まれは18世紀のカリブ海。柑橘のなかでは新しい果物です
  3. 白とピンク、品種で果肉の色が違う
  4. ジンでの役割は、レモンやライムとは別の柑橘の明るさ
  5. 皮だけか、果実ごとか。Gin-Atlasの銘柄でも使い方が分かれる
  6. グラスの中のグレープフルーツ
  7. 果汁と薬の飲み合わせ

植物としての基本

グレープフルーツは、ミカン科の果樹です。学名はCitrus × paradisiと書かれることが多く、1830年に発表された名前です。ただ、英国のキュー王立植物園のデータベースPlants of the World Online(POWO)は、この名前を独立した種として扱っていません。スイートオレンジと同じCitrus × aurantium f. aurantiumの異名に含めています。同じページには、この名前を種として認める文献が4つあることも記されていて、分類の考え方は文献によって分かれています。[1][2]

生まれは18世紀のカリブ海。柑橘のなかでは新しい果物です

米アリゾナ大学の普及資料(2021年)によると、グレープフルーツはザボン(ポメロ)とスイートオレンジの交雑種で、生まれたのはバルバドスかジャマイカだとみられています。記録に初めて出てくるのは1750年です。牧師のグリフィス・ヒューズが、バルバドスで「禁断の果実」と呼ばれるグレープフルーツに似た実を報告しました。[5]

名前の由来ははっきりしません。同じ資料によると、1814年にジャマイカの記録で「小さいシャドック(ザボン)」がグレープフルーツと呼ばれ、1824年の文献は、実がブドウのように房になって実ると書いています。味はブドウと似ていないため、海辺に生えるシーグレープにちなむ名前だと考える人もいるそうです。[5]

アメリカに渡った時期は、資料で食い違います。アリゾナ大学の資料は、白い果肉の品種ダンカンが、オデット・フィリップ伯爵がフロリダのセーフティハーバーに持ち込んだ実生から、早ければ1809年に現れた可能性があるとしています。百科事典のウィキペディアは、フィリップがフロリダに持ち込んだのを1823年としています。[5][8]

白とピンク、品種で果肉の色が違う

品種は、果肉の色で白と色つきに大きく分かれます。アリゾナ大学の資料によると、白の代表はダンカンとマーシュです。ダンカンは1個に種が30〜50粒あり、酸と糖がともに多く、釣り合いのとれた濃い味です。1862年より前にフロリダで生まれたマーシュは種が3〜8粒で、ダンカンより酸が強い品種です。[5]

ピンクや赤の色は、果肉に含まれるβカロテンとリコペンによるものです。同じ資料は、レッドブラッシュ(ルビーレッド)が1931年に枝変わりとして現れたとし、果肉のピンクは冬が進むにつれ薄れると書いています。リオレッドは果肉の赤が濃く、その色は褪せません。この品種がアリゾナ、カリフォルニア、テキサスで最も多く植えられています。ほかに、リオレッドより赤が濃いフレーム(1987年発表)や、資料の著者が、取り上げた品種のなかで最も甘いと考えるスタールビーがあります。[5]

ピンクの実が最初に見つかった時期について、酒の専門サイトGin Foundryは1910年、フロリダのアトウッド・グレープフルーツ社の農園だったと書いています。ウィキペディアは、ルビーレッドの特許を1929年としています。[3][8]

ジンでの役割は、レモンやライムとは別の柑橘の明るさ

ジンに使うのはふつう皮です。Gin Foundryは、グレープフルーツの皮にはレモンやライムに似た鋭さがあるものの、あの二つのようなはっきりした香りはないと説明しています。合わせる相手によって表情を変えるので、ジンに柑橘らしさを足すのに向いている、という見方です。[3]

酒の専門団体The Gin Guildの一覧によると、収穫は2月から5月です。果汁や生食用の収穫を機械で終えたあと、残った実を手で選んで一つずつ皮をむき、日なたに吊るして乾かします。効果は「どんなジンにも、はじけるような明るさを加える」と書かれています。[6]

香りのもとになる成分の一つが、ヌートカトンです。米疾病対策センター(CDC)の2020年8月の発表によると、ヌートカトンはグレープフルーツの皮とアラスカヒノキにごく微量含まれ、グレープフルーツ特有の香りと味をつくる成分です。香水やコロンにも広く使われています。この発表自体は、ヌートカトンが虫よけの有効成分として米環境保護庁に登録されたことを伝えるものでした。[7]

皮だけか、果実ごとか。Gin-Atlasの銘柄でも使い方が分かれる

果実を丸ごと蒸溜するのが、タンカレー ナンバーテンです。まず柑橘だけを「タイニー・テン」という小さな蒸溜器にかけます。小麦からつくったニュートラルスピリッツに、手で刻んだフロリダ産のオレンジ、メキシコ産のライム、そしてグレープフルーツを合わせ、皮だけでなく実ごと蒸溜します。この原酒を、ほかのボタニカルと一緒にもう一度蒸溜します。グレープフルーツは、日本のバー業界向けサイトDRINK PLANETが販売元をキリンビールとしていた時期の製品データでは、フロリダ産です。[4][9][10][11]

そのため、香りの説明にもグレープフルーツが前に出ます。タンカレーは香りを「酸味のきいたグレープフルーツと柑橘、ジュニパー、カモミールの花」と表現しています。ディアジオのバーテンダー向けサイトの言葉は、ジュニパーに搾りたてのライム、オレンジ、ピンクグレープフルーツの果汁が溶け合う、というものです。[12][4]

ドイツのモンキー47は、生の皮を使います。米国の公式サイトによれば、ビターオレンジ、レモン、グレープフルーツの皮はむいたばかりのものを蒸溜前の浸漬液に加える必要があり、そのために地元の人たちが毎朝7時に作業に来ます。Difford's Guideの説明は少し違います。浸漬するのはビターオレンジ、レモン、ポメロの皮で、グレープフルーツの皮は漬けません。ラベンダー、レモンの皮と一緒に蒸溜器の頭にある鋼のかごに入れ、立ちのぼる蒸気で香りを移します。[13][14]

ほかの柑橘の代わりに選んだ銘柄もあります。カナダのエンプレス1908 インディゴ ジンは、ジンでよく使われるレモンやオレンジではなく、グレープフルーツの皮を選びました。理由は、ほろ苦さと甘さを併せ持つ明るい香りだと公式サイトは説明しています。[15][16]

皮の産地を明かす銘柄もあります。英国のNo.3 ロンドンドライジンは、ワイン商ベリー・ブラザーズ&ラッドの取材記事によるとウルグアイ産の皮を使い、公式サイトはその香りを甘酸っぱくはじける香りと書いています。オピア ジンは英国版の公式サイトで産地を「地中海地域」とし、豪州版ではトルコ産です。クミンやカルダモンの温かく土っぽい香りと釣り合いを取る役だと紹介されています。[17][18][19][20]

イタリアのマルフィは、ブランド全体としてシチリア産のピンクグレープフルーツを使うと公式サイトで説明しています。マルフィ ジン コン リモーネのボタニカルにグレープフルーツの皮を挙げているのは、Gin Foundryです。[21][22]

グラスの中のグレープフルーツ

Gin Foundryは、グレープフルーツの使いどころとして、とくにジントニックの飾りを挙げています。果実味がカクテルを生き生きさせ、甘さのある柑橘の味がほかの風味に埋もれない、という説明です。メーカーの勧め方にもこの形が多く、モンキー47の米国公式サイトは、トニックで割ってグレープフルーツの皮をひねって添える一杯を最初に載せています。エンプレス1908は、ジンとトニックウォーターにグレープフルーツのスライスを飾ります。タンカレー ナンバーテンについては、The Gin Guildがピンクグレープフルーツの輪切りを入れたジントニックを勧めています。[3][23][16][24]

果汁を使うカクテルでは、酒の専門サイトDifford's Guideが「ジン・パロマ」を載せています。グレープフルーツ風味のジンに搾りたてのピンクグレープフルーツ果汁、ライム果汁、砂糖のシロップを合わせてシェイクし、ソーダで満たすもので、2019年にチェイス蒸溜所が広めたレシピを手直ししたものです。ジンの外では、The Gin Guildが香水、石けん、マーマレード、精油を用途に挙げています。[25][6]

果汁と薬の飲み合わせ

ここで紹介するのは、グレープフルーツの果汁についての資料です。ジンの香りづけに使う皮や、ジンそのものについての記述ではありません。米食品医薬品局(FDA)は、グレープフルーツジュースが一部の薬の効き方を変えることがあると注意を呼びかけています(2021年7月更新)。果汁が小腸の酵素CYP3A4の働きを妨げると、分解されないまま血中に入る薬が増え、体に長く残ることがあります。逆に、薬を細胞へ運ぶたんぱく質に作用して、抗アレルギー薬フェキソフェナジンのように吸収が減り、効きにくくなる例もあります。セビリアオレンジやポメロなども同じ作用を持つ可能性があるとされ、FDAは薬剤師に確かめるよう勧めています。[26]

グレープフルーツを使ったジン

参考資料

  1. Plants of the World Online(Royal Botanic Gardens, Kew)
  2. Plants of the World Online(Royal Botanic Gardens, Kew)
  3. Gin Foundry
  4. Diageo Bar Academy(Diageo)
  5. University of Arizona Cooperative Extension(AZ1925, 2021年6月)
  6. The Gin Guild
  7. 米疾病対策センター(CDC、2020年8月10日発表)
  8. Wikipedia(英語版)
  9. Difford's Guide
  10. Boothby
  11. DRINK PLANET(celori, inc.)
  12. Tanqueray(Diageo)
  13. Monkey 47 公式(米国)
  14. Difford's Guide(Monkey 47 製法)
  15. Empress 1908 Gin(Victoria Distillers)
  16. Empress 1908 Gin(Victoria Distillers)
  17. Berry Bros. & Rudd
  18. No.3 Gin(Berry Bros. & Rudd)
  19. OPIHR 公式(Spices of the Orient・英国版)
  20. OPIHR 公式(Oriental Spiced・豪州版)
  21. Malfy Gin(公式サイト About Us/FAQ)
  22. Gin Foundry(Malfy Gin、2016年。ページ表記 03/04/2016)
  23. Monkey 47 公式(米国)レシピ
  24. The Gin Guild
  25. Difford's Guide
  26. 米食品医薬品局(FDA)Consumer Update