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オレンジOrange

ジンの柑橘の香りを担うボタニカルで、使うのはおもに皮です。甘味種とビターオレンジのどちらを指すかは銘柄によって違い、乾燥皮で使うか生の皮で使うかも蒸溜所ごとに分かれます。

オレンジの基本情報

学名Citrus × sinensis (L.) Osbeck(甘味種。Kew POWOではCitrus × aurantium f. aurantiumの異名)。ビターオレンジはCitrus × aurantium[1][2][3][4][5]
科ミカン科(Rutaceae)[2]
使う部位おもに皮。手で長くむくのがふつう。タンカレー ナンバーテンとFour Pillarsは果実全体を使う[6][7][8]
主な産地スペイン(セビリアなど)。トルコ、フロリダ(タンカレー ナンバーテン)を挙げる資料もある[6][3][9]
収穫期3月(スペインのオレンジ)[6]
香りの系統フレッシュでジューシーなオレンジの風味(Difford's Guide)[6]

目次

  1. 「オレンジ」と書かれたジンの皮は、甘味種のこともビターオレンジのこともある
  2. 植物としての基本
  3. ジンに使うのは果肉ではなく皮。精油は皮の油腺にたまります
  4. 乾燥皮と生の皮は、ビターオレンジと甘味種で使い分ける傾向があります
  5. 産地
  6. 銘柄ごとの使われ方
  7. ジンの外での使われ方

「オレンジ」と書かれたジンの皮は、甘味種のこともビターオレンジのこともある

ボタニカル表の「オレンジ」は、一つの果物を指すとは限りません。酒の専門団体The Gin Guildは、この二つを別々に説明しています。Citrus sinensisの果実が甘いオレンジ、Citrus aurantiumの果実がビターオレンジです。[3][4]

選び方は蒸溜所しだいです。酒の専門サイトDifford's Guideは、オレンジの種類は蒸溜所ごとに違い、ビターを好むところも甘味種を好むところもある、と書いています。Gin-Atlasの「オレンジ」の項目に集めた銘柄でも同じで、甘味種と明かす銘柄、ビターオレンジと明かす銘柄、両方と書く銘柄、種類を書かない銘柄が混ざっています。[6][10][11][12][13][14]

植物としての基本

ミカン科です。英国のキュー王立植物園のデータベースPlants of the World Onlineには、甘味種のCitrus × sinensis (L.) Osbeckの項があります。ただし、同じ資料はこの名前をCitrus × aurantium f. aurantiumの異名として扱い、甘味種もCitrus × aurantiumの中に入れています。分類は機関によって分かれます。[1][2]

ビターオレンジの学名は、RHSとThe Gin GuildがCitrus × aurantiumとしています。Gin-Atlasでは別の項目にまとめています。キューは、人為的な雑種で自然の分布地はなく、世界各地で栽培されていると説明します。英国王立園芸協会(RHS)が載せる「セビリアオレンジ」はこの系統で、皮は厚くてでこぼこし、味は酸っぱくて苦いとされています。[15][5][4]

来歴は古く、専門サイトGin Foundryは、オレンジはアジア、東インドから中国南部、ベトナムにかけての地域に起源があるとしています。ローマ帝国には紀元前1世紀ごろ、ペルシャの商人を通じて届いたそうです。甘味種が広まったのは、15世紀にポルトガルの商人が地中海に木を持ち込んでからだと説明しています。[8]

ジンに使うのは果肉ではなく皮。精油は皮の油腺にたまります

Difford's Guideによると、ジンに使うのは皮です。果肉は使わず、たいてい手で1本の長い帯のようにむきます。風味は、フレッシュでジューシーなオレンジだといいます。[6]

理由は皮の構造にあります。柑橘の皮の色づいた外側の層(フラベド)には、油をためる小さな袋状の組織、油腺が並んでいて、ここが精油の貯蔵場所です。2012年の論文は、この構造を柑橘の皮のものとして述べています。調べた果実は、グレープフルーツです。[16]

スイートオレンジ、ビターオレンジ、マンダリン、グレープフルーツの精油は、主成分がd-リモネンです。割合は65.3〜95.9%の範囲だと、2018年のレビュー論文は整理しています。ビターオレンジの油は、食品やリキュールの香りづけにも使われます。キューの説明です。[17][15]

皮の油はスピリッツに溶け出します。農薬が皮に残っていれば同じように移りうると、Gin Foundryは注意し、有機栽培のオレンジを勧めています。[8]

乾燥皮と生の皮は、ビターオレンジと甘味種で使い分ける傾向があります

Gin Foundryは、歴史的な傾向として、セビリアオレンジの皮は乾かして使い、甘味種の皮は生で使うと書いていて、新しくジンをつくる人への助言は、乾燥か生か、甘味種かビターかを、よく考えて選ぶことです。[8]

乾燥皮のつくり方は、The Gin Guildのビターオレンジの項が説明しています。ビターオレンジの木の実は主に乾燥皮の生産に使われ、果汁用の機械収穫のあとに残った実を手で選び、1個ずつ手でむいて、日なたに吊るして乾かすそうです。[4]

実際の銘柄は、この傾向どおりとは限りません。ビターオレンジと明かすMonkey 47の皮は生です。むいたばかりのものを仕込みに加えます。そのために、地元の人たちが毎朝7時に作業に来ると、公式サイトは書いています。[18][11]

産地

Difford's Guideは、ジンに使うオレンジの皮はスペイン、なかでもセビリアから来ることが多く、そこでは3月に収穫すると書いていて、The Gin Guildは、甘味種の産地としてスペインとトルコを挙げています。[6][3]

No.3 London Dry Ginのオレンジの皮は、BBRの取材記事でブライアントがスペイン産と述べていて、シップスミスも、セビリアオレンジの皮をスペイン産としています。OPIHRの公式サイトは、甘味種とビターのオレンジの皮を、地中海の太陽で熟したスペイン産、ときにトルコ産と書いています。[19][20][14][21]

ジン・マーレは、Difford's Guideによると、セビリアの甘味種とバレンシアのビターオレンジを使います。フロリダを挙げるのは、タンカレー ナンバーテンです。Difford's Guideはオレンジをフロリダ産、ライムをメキシコ産としています。[22][9]

銘柄ごとの使われ方

甘味種を明記する銘柄の一つが、No.3 London Dry Ginです。ボタニカル6種のうち、スイートオレンジの皮がスペイン産で、公式サイトはその香りを、甘酸っぱい柑橘の香りと説明しています。ジン・マーレは、セビリアのスイートオレンジとバレンシアのビターオレンジの両方を使い、レモンとあわせた3種の柑橘の皮を手でむいて、スピリッツに1年間漬けます。年間のオレンジの皮は200キロです。OPIHRの公式サイトも、甘味種とビターの両方のオレンジの皮を使うと書いています。[10][19][23][22][14]

ビターオレンジと明記する銘柄も、Gin-Atlasでは「オレンジ」の項目に入っています。ROKU〈六〉は、サントリーの2020年のニュースリリースに、オレンジはビターオレンジの皮と書かれています。Monkey 47は生です。[12][11]

種類は書かない銘柄もあります。シップスミスはセビリアオレンジの皮をスペイン産とし、酸味とマーマレードのような含みを加えると説明していて、ヘンドリックスは、公式サイトが11種のひとつにオレンジの皮を挙げていて、蒸気で香りを移すカーターヘッド式蒸溜器では、かごのいちばん下にオレンジの皮を敷くと、Difford's Guideが伝えています。The Botanistは定番9種のひとつにオレンジの皮があり、Malfyも、2016年のGin Foundryの記事が挙げています。[20][13][24][25][26]

タンカレー ナンバーテンは、皮だけでなく果実全体を、手で刻んで使います。フロリダ産のオレンジを、メキシコ産のライム、グレープフルーツとあわせて、「タイニー・テン」と呼ぶ小さな蒸溜器にかけます。ブランドの公式資料は、これを二段階の一段目だと説明していて、柑橘だけを先に蒸溜した原酒を、次に大きな蒸溜器でほかのボタニカルと合わせて、もう一度蒸溜します。果実全体を使う例は、ほかにもあります。Four Pillarsは、バレンシアとネーブルのオレンジを、生のまま丸ごと蒸気のかごに入れます。Gin Foundryの記述です。[7][9][27][8]

Silent Poolの公式サイトは、柑橘としてオレンジ、ライム、タイのライムを挙げますが、Gin Foundryは2016年5月の記事で、これとは別にビターオレンジも挙げています。Gin-Atlasでは、後者を別項目のビターオレンジとして載せています。ニッカ カフェジンは、土台の5種のひとつにオレンジを挙げていますが、種類や部位の説明はありません。[28][29][30]

ジンの外での使われ方

ビターオレンジの生の果肉は食べられません。実はマーマレードに使われます。キューがそう説明していて、RHSも、セビリアオレンジをマーマレード用として扱っています。皮は調味料にも使われます。[15][5]

オレンジ・キュラソーは、Difford's Guideによると、伝統的にはカリブ海のキュラソー島にある小さなビターオレンジの、乾燥した皮でつくります。島はオランダの植民地でした。そのため、オランダのリキュール職人にオレンジが渡りました。Difford's Guideは、2026年9月時点で、ほかのビターオレンジや甘味種でもつくられていると書いています。[31]

オレンジを使ったジン

参考資料

  1. Kew Plants of the World Online(Citrus × sinensis)
  2. Kew Plants of the World Online(Citrus × aurantium f. aurantium)
  3. The Gin Guild(Ginopedia: Orange, Sweet)
  4. The Gin Guild(Ginopedia: Orange, Bitter)
  5. Royal Horticultural Society(Seville orange)
  6. Difford's Guide(Gin Botanicals Explained)
  7. Diageo Bar Academy(Diageo)
  8. Gin Foundry(Orange)
  9. Difford's Guide
  10. Berry Bros. & Rudd
  11. Monkey 47 公式(米国)
  12. サントリーホールディングス(ニュースリリース 2020年)
  13. Hendrick's Gin(米国公式サイト)
  14. OPIHR 公式(トップページ・英国版)
  15. Royal Botanic Gardens, Kew(Bitter orange)
  16. Plant Physiology 159(1), 2012(Voo, Grimes, Lange)
  17. International Journal of Molecular Sciences 19(7), 2018(Dosoky & Setzer)
  18. Difford's Guide(Monkey 47 製法)
  19. Berry Bros. & Rudd
  20. Sipsmith 公式
  21. OPIHR 公式(Spices of the Orient・英国版)
  22. Difford's Guide
  23. No.3 Gin(Berry Bros. & Rudd)
  24. Difford's Guide
  25. Difford's Guide(The Botanist Islay Dry Gin)
  26. Gin Foundry(Malfy Gin、2016年。ページ表記 03/04/2016)
  27. Boothby
  28. Silent Pool Distillers 公式(ボタニカル)
  29. Gin Foundry(2016年5月13日)
  30. Nikka Whisky
  31. Difford's Guide(Orange Curaçao Liqueurs)