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アンジェリカルートAngelica root

セリ科の背の高い草で、ジンには主に根を使います。土や森の地面を思わせる香りとドライな余韻をもち、ほかのボタニカルの香りをまとめる役と説明されることが多く、多くの銘柄が使っています。

アンジェリカルートの基本情報

学名Angelica archangelica L.[1]
科セリ科(Apiaceae)[1]
生活型多年草または二年草(資料により異なる)[1][2]
使う部位ジンでは主に根。種を使う例もある[3][4]
主な産地ドイツ(ザクセン)、ベルギー、ポーランドなど(銘柄により異なる)[5][6][7][8]
収穫期根は11月〜1月、種は7〜8月[5][4]
香りの系統土や木の根を思わせる、麝香のような香りとドライな余韻[9][3][10]

目次

  1. 植物としてのアンジェリカ
  2. 香りは土っぽく、乾いた余韻を残す
  3. 「香りをつなぐ役」と言われるが、2014年の記事は化学的な裏づけはほぼないと指摘した
  4. 産地と収穫
  5. 北欧では甘い食べ物として食べられ、感染から身を守る植物としても語られた
  6. Gin-Atlasの銘柄での使われ方
  7. ほかの飲食での使われ方

植物としてのアンジェリカ

アンジェリカの学名は Angelica archangelica L. で、セリ科の植物です。自生域は、キュー王立植物園のデータベースによると、グリーンランドとヨーロッパから西シベリアまで。生活型は資料で書き方が分かれ、キューは多年草、ノースカロライナ州立大学のデータベースは二年草か短命の多年草としています。同大学によると、1年目は葉だけで、2年目に花が咲き、種が熟せば枯れます。[1][2]

根は太い主根です。使う部位は、根のほか、種、茎、葉と幅広くあります。ブリタニカ百科事典は、根と実から採る油がリキュールや香料に使われ、若い芽は香りのよい甘い菓子の材料になると書いています。ジンで多いのは根です。種や花を使う造り手もいると、酒の専門サイトGin Foundryは2014年の記事で述べました。[11][12][3]

毒のある植物とよく似ているため、The Gin Guildは、確実に見分けられるまで口にしないよう注意しています。[5]

香りは土っぽく、乾いた余韻を残す

酒の専門サイトDifford's Guideは、根の香味を、麝香(ムスク)を思わせる、ナッツのような、湿った森の地面のようなものと書いています。甘みがあり、縁に松のような乾きがあるそうです。Difford's Guideの筆者は、キノコも連想するそうです。[9]

Gin Foundryは、蒸溜したアンジェリカを、土っぽく、少し苦く、少しハーブらしい味と表現しました。ニガヨモギ(ワームウッド)に通じるところがあり、匂いはかすかにイラクサに似ているそうです。[3]

植物そのものは、強い麝香のような匂いをもち、味は温かく甘い。ノースカロライナ州立大学のデータベースは、そう説明しています。根、葉、種、若い茎の風味は、甘草(リコリス)に近いとも書いています。[2]

造り手の説明も同じ方向を向いています。ナンバースリーの公式サイトは、アンジェリカルートの持ち味を、草のようで土っぽく、ドライな余韻としています。シップスミスも、長く乾いた余韻をつくるのはアンジェリカだと説明します。Dunnet Bay Distillersは、土っぽさを加え、ジンらしいドライ感を生む植物としてよく知られていると書いています。[10][7][13]

種は、根ほど広くは使われません。Difford's Guideによると、種はホップやセロリを思わせる香りと、わずかな花のニュアンスをジンに与えます。[9]

「香りをつなぐ役」と言われるが、2014年の記事は化学的な裏づけはほぼないと指摘した

ジンの中での役目は、香りをまとめること。そう説明されることが多い素材です。Difford's Guideはボンベイ・サファイアについて、こう書いています。ジュニパーやレモンピール、コリアンダーシードの明るく新鮮な高い香りを整える。同時に、ほかのボタニカルの揮発しやすい香りを留めてなじませ、長さと厚みを与える。[6]

ビーフィーターの公式ブログは、ほかの風味をなじませる「つなぎ役」と呼びます。シップスミスは、アンジェリカ、リコリス、オリスルートの3つの根が、ほかの香りが生きるようにまとめ、苦みを抑えると説明します。Dunnet Bay Distillersは、ボタニカルをなじませる定着剤として使うと書いています。[14][7][13]

一方でGin Foundryは、2014年の記事で、多くの造り手がアンジェリカを「つなぎ役」として認めているが、化学的にそうだと示す証拠はほとんどない、と指摘しました。同じ記事は、ジュニパー、コリアンダーシードに次ぐ第3の主要な素材と見る人が多いとも述べています。[3]

産地と収穫

The Gin Guildは、根の産地をベルギーとザクセン(ドイツ)としています。植え付けは6月から8月。成熟まで約18か月かかります。収穫は11月から1月です。種は7月から8月です。根はビート用の収穫機で掘り上げたあと、回転させて土を落とし、洗って乾かして、使いやすい大きさに切ります。[5][4]

ボンベイ・サファイアの根について、Difford's Guideはザクセンのドレスデン周辺の森に育つものだと書いています。収穫は、2年育った株から。専用の道具で根を掘り上げます。[6]

ザクセンか、それ以外か。意見は分かれます。Difford's Guideによると、ほとんどの蒸溜家はザクセン産をいちばんなめらかでまろやかと考え、ベルギーのフランドル産の刺激が強いものよりも好みます。ところがGin Foundryは、産地は品質にほとんど影響しないと書いています。どの国にも良いものと悪いものがあり、造り手は産地にあまりこだわらないそうです。[9][3]

銘柄では、ボンベイ・サファイアがドイツのザクセン、シップスミスがベルギー、オピールがドイツを挙げています。ナンバースリーは、Berry Bros. & Rudd の取材記事がポーランド産のアンジェリカルートと書いています。[15][7][16][8]

北欧では甘い食べ物として食べられ、感染から身を守る植物としても語られた

北欧での記録は古く、1150年から1175年ごろの古ノルド語の法律に、この植物を盗んだ者への罰が書かれています。「アンジェリカの園」を意味する語(hvanngarð)も残っています。研究者3人による2020年の論文が、文献や民族誌をたどって示しています。[17]

同じ論文によると、アイスランドとフェロー諸島では、17世紀に交易所で砂糖が手に入るようになるまで、アンジェリカの茎が唯一の甘い食べ物でした。サーミの人々も、皮をむいた茎を好んで食べたと、リンネが記しています。ブリタニカ百科事典も、この植物が豊富に育つフェロー諸島とアイスランドでは野菜とみなされていると書いています。[17][11]

戸口や廊下に置くと、強い匂いが感染の広がりを防ぐと考えられました。北欧の外へは、中世に修道士が北欧から各地へ旅するなかで伝わったらしいと、論文は推測しています。ノルウェーからフランスへの主要な輸出品だったと書く人もいますが、裏づける史料はありません。[17]

名前にまつわる伝説もあります。Dunnet Bay Distillersによると、大天使ミカエルが修道士のもとを訪れ、ペストに効く植物だと告げたという言い伝えがあります。そこから「天使の草」と呼ばれるようになりました。ノースカロライナ州立大学のデータベースも、学名の archangelica は、大天使が人に薬効を明かしたという伝説にちなむと説明しています。中世のヨーロッパでは、根を身につければ魔術や呪いから守られると信じられていたとも、Dunnet Bay Distillersは書いています。[13][2]

北欧の食卓では、いまはほとんど見かけません。それでも新北欧料理では種、茎、葉柄、葉、根がスープ、ピクルス、油、デザートなどに使われています。[17]

Gin-Atlasの銘柄での使われ方

タンカレーは、アンジェリカルートを土台に置くジンです。ディアジオによると、1830年に蒸溜所を開いたチャールズ・タンカレーは、300を超えるレシピを試しました。行き着いたのは、ジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカルート、リコリスの4種を土台にしたロンドンドライジンです。[18][19][20]

タンカレー ナンバーテンは8種類で、ジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカルート、リコリスの4種は、タンカレー ロンドンドライと同じ顔ぶれです。[21][22][23]

ボンベイ・サファイアは10種類のうちの1つです。公式サイトのジントニックの説明では、オリスルートとアンジェリカルートの土っぽく華やかな香りが、柑橘とジュニパーベリーを引き立てるとされています。[15][24]

ナンバースリーは6種類です。ジュニパーベリーが軸で、コリアンダーシード、アンジェリカルート、カルダモン、グレープフルーツの皮、スイートオレンジの皮が支えます。公式サイトは、口に含んだあとにアンジェリカルートの土っぽさがドライな余韻を残すと紹介しています。[25][10]

ROKUは、根と種の両方を使います。組み合わせるのは、ジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカルート、アンジェリカシード、カルダモン、シナモン、オレンジ、レモンの8種と、和素材です。ニッカ カフェジンは11種類のうち、ジュニパーベリー、アンジェリカルート、コリアンダーシード、レモン、オレンジを土台にし、和柑橘や山椒を加えます。ヘンドリックスの公式サイトも、11種類の1つとして挙げています。[26][27][28][29][30]

ほかの飲食での使われ方

若い茎は、皮をむいてセロリのように調理するほか、砂糖漬けにされます。砂糖漬けの茎はプディングやケーキの飾りになると、ノースカロライナ州立大学のデータベースは説明しています。Gin Foundryは、棒状の砂糖漬けをジントニックの飾りに使えると書いています。[2][3]

リキュールにも使われます。The Gin Guildは、種と茎を菓子や風味づけ、リキュールづくりに使うと書き、砂糖漬けの茎を菓子の飾りとして挙げています。リキュールの例は、シャルトリューズ、ベネディクティン、ベルモット、デュボネです。Gin Foundryも、フェルネット、一部のベルモット、シャルトリューズに使われると述べ、その背景として古くからの薬効を挙げています。[4][3]

アンジェリカルートを使ったジン

参考資料

  1. Plants of the World Online(Kew Science)
  2. North Carolina Extension Gardener Plant Toolbox(ノースカロライナ州立大学)
  3. Gin Foundry(Angelica、2014年)
  4. The Gin Guild(Angelica seed)
  5. The Gin Guild(Angelica root)
  6. Difford's Guide(Bombay Sapphire: Angelica Root from Saxony, Germany)
  7. Sipsmith 公式
  8. Berry Bros. & Rudd
  9. Difford's Guide(Gin botanicals)
  10. No.3 Gin(Berry Bros. & Rudd)
  11. ブリタニカ百科事典(Angelica)
  12. ブリタニカ百科事典(Angelica archangelica)
  13. Dunnet Bay Distillers(Beautiful Botanicals: Angelica)
  14. Beefeater Gin 公式ブログ(What are the Botanicals in Gin?)
  15. Difford's Guide
  16. OPIHR 公式(Spices of the Orient・英国版)
  17. Teixidor-Toneu, Kjesrud, Kool (2020) Journal of Ethnobiology 40(3)(オスロ大学自然史博物館掲載のPDF)
  18. The Spirits Business
  19. Diageo Bar Academy(Diageo)
  20. Diageo plc
  21. Diageo Bar Academy(Diageo)
  22. Boothby
  23. Difford's Guide
  24. Bombay Sapphire 公式(Bombay Sapphire & Tonic レシピ)
  25. Berry Bros. & Rudd
  26. サントリーホールディングス(ニュースリリース 2020年)
  27. Nikka Whisky
  28. Hotaling & Co.(米国輸入元)
  29. Hendrick's Gin(米国公式サイト)
  30. Hendrick's Gin(公式サイト FAQ)