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レモンLemon

レモンの皮は、フレッシュで柑橘らしい風味をジンに加えます。生のまま使う、1年漬ける、先に搾るなど、銘柄ごとに皮の扱いが違い、スペインやイタリア、広島県のレモンを使う銘柄が載っています。

レモンの基本情報

学名Citrus × limon (L.) Osbeck(Kew)[1]
科ミカン科(Rutaceae)[1]
使う部位皮。果肉は使わない[2][3]
主な産地スペイン(アンダルシア、ムルシアなど)、トルコ。イタリア(アマルフィ海岸、シチリア、ソレント半島)、日本(広島県)は銘柄の説明に出てくる[2][3][4][5][6]
収穫期2月から5月(The Gin Guild)。アマルフィ海岸は2月から10月ごろ[3][7]
香りの系統フレッシュで柑橘らしく、みずみずしいレモンの風味(Difford's Guide)[2]

目次

  1. 植物としての基本
  2. ジンに使うのは果肉ではなく皮。風味の油は皮に多い
  3. 産地は、スペインとイタリアの名が並ぶ
  4. 同じレモンの皮でも、生で使う、1年漬ける、先に搾るなど銘柄で分かれる
  5. 国産レモンの約半分は広島県産。ジンにも広島のレモンが入る
  6. ジンの外での使われ方

植物としての基本

レモンは、ミカン科の果樹です。英国のキュー王立植物園のデータベースPlants of the World Onlineは、学名をCitrus × limon (L.) Osbeckとし、人為的な雑種に由来する栽培種で、自然の分布地はないと説明しています。交配の組み合わせとして、C. maxima × C. medica × C. reticulataという式も載せています。[1]

由来の説明は資料によって違います。百科事典のウィキペディアは「シトロンとビターオレンジの雑種」と書き、原産地の候補にインド北西部を挙げています。文献への初出は、10世紀のアラビア語の農書です。ヨーロッパで本格的に栽培が始まったのは、15世紀ごろのジェノヴァ。コロンブスが1493年にアメリカ大陸へ持ち込んだ、とも記されています。ジェノヴァとコロンブスの話は、Gin Foundryも伝えています。[8][9]

品種は多く、Gin Foundryによれば約47です。次の節以降に品種名が出てくるのは、スペインのフィノ種、イタリアの3産地の品種、日本の2品種です。[9]

ジンに使うのは果肉ではなく皮。風味の油は皮に多い

ジンのボタニカルにするのは、レモンの皮です。酒の専門サイトDifford's Guideは、その理由を「皮には風味のもとになる油が多く含まれるから」と書いています。加わるのは、フレッシュで柑橘らしく、みずみずしいレモンの風味です。[2]

皮の産地について、Difford's Guideは、ジンをつくる蒸溜所の多くはレモンをスペイン南部のアンダルシアから仕入れ、そこでは今も手でむいて日なたで乾かす、と書いています。酒の専門団体The Gin Guildの一覧では、産地はスペインとトルコ、収穫は2月から5月で、果汁用の収穫を機械で終えたあとに残った果実を選び、一つずつ手で皮をむいて日なたに吊るして乾かす、と説明しています。[2][3]

産地は、スペインとイタリアの名が並ぶ

スペイン産を明かす銘柄は複数あり、シップスミスは公式サイトで、セビリアオレンジとレモンの皮がどちらもスペイン産だと説明しています。ボンベイ・サファイアのレモンの皮は、Difford's Guideによればムルシア産です。2023年発売の「ボンベイ・サファイア プレミア クリュ」では、バカルディ ジャパンの発表によると、柑橘はムルシア地方で職人が手摘みし、地中海の日差しで自然に乾かしたもので、レモンはフィノ種だけを使っています。ジン・マーレのレモンは、Difford's Guideによればリェイダ産です。[10][4][11][12][13]

イタリアのマルフィも産地を明かしています。Gin Foundryは2016年の記事で、アマルフィ海岸産とシチリア産のレモンの皮をおよそ2対8の割合で混ぜていると伝えました。業界誌Bar Businessの記述は、アマルフィ海岸の「名高いスフザート・レモン」です。[5][14]

スフザートは、スフザート・アマルフィターノという品種のことです。EUの地理的表示(PGI)「Limone Costa d'Amalfi」の対象は、この品種です。収穫は2月から10月ごろ。果皮は中くらいの厚みで、精油による強い香りがある、と登録の情報に書かれています。栽培は段々畑です。石垣で区切り、高さ180センチ以上の木枠の下で育てます。登録は2001年です。マルフィがこの認定品を使うかどうかは、資料にありません。[7]

シチリアのレモンについて、マルフィの資料は品種を書いていません。参考までに、シチリア島のシラクーザ県にも「Limone di Siracusa」というPGIがあります。品種はフェミネッロで、収穫の始まりが10月1日の「プリモフィオーレ」、4月1日の「ビアンケット(マイオリーノ)」、6月1日の「ヴェルデッロ」の3タイプがあり、果皮に油を蓄える腺が多いのが特徴だそうです。登録は2011年2月3日です。[15]

ソレント半島にもPGIがあります。品種はフェミネッロ・オヴァーレで、皮は中くらいの厚みで、精油が豊富です。香りは強い、とPGIの規定のページは説明しています。[16]

ジン・マーレには派生品のカプリもあります。2021年の発売です。Brown-Formanの2022年の発表は、イタリア産のベルガモットとレモンを、定番の4つのボタニカルに合わせたと伝えています。[17][18]

同じレモンの皮でも、生で使う、1年漬ける、先に搾るなど銘柄で分かれる

まず、蒸気に香りを移す方法です。ボンベイ・サファイアは、ボタニカルを銅のかごに入れて蒸溜器の上部に置き、立ちのぼる蒸気に香りを移します。Difford's Guideによると、かごに詰める順番があり、ジュニパーベリーやレモンの皮のような粒や皮を先に入れ、オリスルートやカシアのような粉にしたものを後に入れます。[19]

モンキー47の皮は生です。公式サイトによれば、ビターオレンジ、レモン、グレープフルーツの皮は、むいたばかりのものを仕込みに加える必要があります。そのため、地元の人たちが毎朝7時に作業に来ます。ビターオレンジ、レモン、ポメロの皮は、糖蜜のアルコールと湧き水に漬けます。蒸溜器の頭のかごには、ラベンダー、グレープフルーツと並べてレモンの皮を入れます。[20][21]

ジン・マーレは1年漬けます。手で長くむいた柑橘の皮を、水で薄めたフランス産大麦のニュートラルスピリッツに1年間漬けます。オレンジ2種とレモンは一緒に漬け、1回の浸漬に使うのはスピリッツ40リットルと皮14キロ。1年分に直すとレモンの皮は80キロになり、皮1キロを取るのに果実が8〜9キロ要る計算だと、Difford's Guideは書いています。[13]

マルフィ ジン コン リモーネは順序が逆です。皮は先にアルコールに浸し、バスケットプレスで搾って、できた液をほかのボタニカルと一緒に低い温度の真空蒸溜器で蒸溜します。メーカーの紹介では、香りは「爽やかな柑橘に、ジュニパーが背景に控える」。味わいは「レモンの刺激と、長く複雑な余韻」です。[5][22][23][24]

下処理が公表されていない銘柄もあります。サントリーのROKU〈六〉は、2020年の発表で、レモンも皮を使うとしています。ヘンドリックスの公式サイトは、11種類のボタニカルにレモンの皮を挙げています。シップスミスは、公式サイトでレモンの皮が柑橘にほのかな明るさと、かすかなレモンタルトの香りを加えると説明しています。ニッカ カフェジンでは、ジンでおなじみの5種(ジュニパーベリー、アンジェリカルート、コリアンダーシード、レモン、オレンジ)の一つです。ザ・ボタニストは、Difford's Guideによると定番の9種類の一つです。[25][26][10][27][28][29]

国産レモンの約半分は広島県産。ジンにも広島のレモンが入る

広島県の公式ページによると、2021年産のレモンは、広島県が栽培面積302ヘクタール(全国の41%)、生産量4,401トン(全国の51%)です。国内で栽培される代表的な品種はリスボンとビラフランカ。出荷は7月のハウスレモンから。10月と11月は緑色のグリーンレモンで、年末ごろから5月は黄色いイエローレモンです。県内の栽培は、1898年(明治31年)に呉市豊町大長で試植したのが始まりだそうです。[6]

広島のレモンを使うジンが二つあります。京都の季の美は、広島県尾道市の「citrusfarms たてみち屋」が無農薬の有機栽培で育て、2月から3月に収穫したレモンで、蒸溜所に直送され、手で皮をむいて真空パックにし、必要な分だけ冷凍庫から出して使います。京都・吉祥院産のレモンも使います。公式サイトは、レモンについて「蒸溜するとフレッシュなシトラスの香りと共に驚くほどのピュアな甘さとフローラルで軽やかなアロマをもたらします」と書いています。京都・吉祥院産は、蒸溜所に近い産地です。京都のイメージに合う「和」の香木のような特徴を持つそうです。[30]

もう一つはサクラオ ジン オリジナルです。メーカーは、特に香りの強い広島県産のグリーンレモンを使います。役目は爽やかさを強めること。ネーブルオレンジは風味をまとめ、夏みかんは他の柑橘の甘さを引き立て、橙が複雑さを、安芸高田市産の川根柚子が強い香りを加える、と5種の柑橘の役割を分けています。[31]

ジンの外での使われ方

The Gin Guildの一覧は、レモンの用途にジン以外の香水、石けん、マーマレード、精油を挙げています。ソレント半島のPGIの規定では、生で食べるほか、リモンチェッロや菓子に加工するとされています。[3][16]

バーでは皮も果汁も使います。シップスミスのマティーニは、ジン5にドライベルモット1。ステアして、レモンピールを添えます。季の美のジン&ソニックにも、レモンピールが添えられます。マルフィは、レモン果汁と砂糖のシロップとシェイクし、レモンのソルベを浮かべてプロセッコを注ぐ「スグロッピーノ」のレシピを公式サイトに載せています。[32][33][34]

蒸溜所でも、レモンは働きます。Gin Foundryによれば、レモンのクエン酸が銅製の蒸溜器の掃除に使われるそうです。[9]

レモンを使ったジン

参考資料

  1. Kew Plants of the World Online(Citrus × limon)
  2. Difford's Guide(Gin Botanicals Explained)
  3. The Gin Guild(Ginopedia: Fresh Lemon)
  4. Difford's Guide
  5. Gin Foundry(Malfy Gin、2016年。ページ表記 03/04/2016)
  6. 広島県(瀬戸内 広島レモンとは、令和3年産のデータ)
  7. Qualigeo(欧州連合の地理的表示データベース、Limone Costa d'Amalfi PGI)
  8. Wikipedia(Lemon)
  9. Gin Foundry(Lemon)
  10. Sipsmith 公式
  11. バカルディ ジャパン(輸入元・プレミア クリュ発売のプレスリリース、PR TIMES)
  12. バカルディ ジャパン(輸入元・プレミア クリュ商品ページ)
  13. Difford's Guide
  14. Bar Business Magazine(2018年2月14日)
  15. Qualigeo(欧州連合の地理的表示データベース、Limone di Siracusa IGP)
  16. Filiera del Limone di Sorrento IGP(PGI規定のページ)
  17. Brown-Forman(2022年9月6日)
  18. Gin Mare 公式
  19. Difford's Guide(Bombay 製法)
  20. Monkey 47 公式(米国)
  21. Difford's Guide(Monkey 47 製法)
  22. Difford's Guide(Malfy Con Limone Gin)
  23. Pernod Ricard(ブランド紹介 Malfy)
  24. Malfy Gin(公式サイト コン リモーネ製品ページ)
  25. サントリーホールディングス(ニュースリリース 2020年)
  26. Hendrick's Gin(米国公式サイト)
  27. Nikka Whisky
  28. Hotaling & Co.(米国輸入元)
  29. Difford's Guide(The Botanist Islay Dry Gin)
  30. 京都蒸溜所(KI NO BI GIN 公式)
  31. サクラオブルワリーアンドディスティラリー(SAKURAO DISTILLERY)
  32. サントリー(輸入元)ブランドサイト
  33. The Kyoto Distillery(KI NO BI GIN 公式・カクテル KI NO BI Sonic)
  34. Malfy Gin(公式サイト Sgroppino)