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ジュニパーベリーJuniper berry

ジンの主な香りづけとなるボタニカルで、EUの規則ではこれを使わなければジンと名乗れません。果実に見えて実は種子をつつむ球果で、熟すまでに2〜3年かかります。

ジュニパーベリーの基本情報

学名Juniperus communis L.(EU規則がジンに使う実として定める種)[1][2]
科ヒノキ科(針葉樹)[2]
使う部位雌株につく球果(通称ジュニパーベリー)[2][3]
産地の例イタリア(トスカーナ)、マケドニア、セルビア、ボスニア、アルバニア、クロアチアなど[4][5][6][7]
収穫期秋から冬(Difford's Guideは10月〜2月、The Gin Guildは9月〜1月)[4][5]
熟すまで2〜3年(Headlandsによる)[3]
香りの系統松、ラベンダー、樟脳、胡椒のような余韻(Difford's Guide)[4]

目次

  1. ジンと名乗るには、EUの規則ではジュニパーベリーが欠かせません
  2. 日本の酒税法での扱い
  3. ジュニパーベリーは果実ではなく、種子をつつむ球果です
  4. 産地、収穫期、熟成
  5. 野生採取の現状
  6. 歴史と料理での使われ方
  7. Gin-Atlasの銘柄での使われ方

ジンと名乗るには、EUの規則ではジュニパーベリーが欠かせません

EU規則2019/787の付属書Iは、ジンを「農産物由来のエチルアルコールに、ジュニパー(Juniperus communis L.)の実で香りをつけた、ジュニパー風味のスピリッツ」と定めています。最低アルコール度数は37.5%です。使えるのは香味物質か香味調製物だけ。味は「ジュニパーが主体」でなければなりません。[1]

つくり方で分けた区分もあります。蒸溜ジンは、度数96%以上の農産物由来エチルアルコールを、ジュニパーとほかの天然のボタニカルと一緒に蒸溜し、ジュニパーの味が主体であるものです。エッセンスや香料をアルコールに加えただけのものは、蒸溜ジンとは認められません。ロンドンジンは、さらに厳しい区分です。蒸溜液の度数が70%以上で、着色せず、甘味は最終製品1リットルあたり0.1g(転化糖換算)まで、という条件がつきます。[1]

ジンと並んで、ジュニパー風味のスピリッツドリンクという区分があります。最低度数は30%です。ボタニカルを加えてもよく、ジュニパーの特徴が「弱められることはあっても」感じ取れることが条件です。「ヴァッホルダー」「ジェネブラ」の名称を使えるのも、この区分です。以上は2019年に採択された原文の内容です。[1]

日本の酒税法での扱い

ジンという品目は、日本の酒税法にはありません。第3条は酒類の品目を定義しており、スピリッツは第20号で「第7号から前号までに掲げる酒類以外の酒類でエキス分が2度未満のもの」とされています。この定義にジュニパーは出てきません。ジュニパーを使うことは、スピリッツの条件ではないのです。[8]

第9号は、連続式蒸留焼酎から「アルコール含有物を蒸留する際、発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させたもの」(ニ)を除いています。国税庁の通達は、この第9号ニに該当するものをスピリッツ(いわゆるジン等)と整理しています。通達は「浸出させた」を、蒸留する際に発生するアルコール蒸気又は液化されて留出するまでのアルコールに、他の物品の成分を浸出させることと説明しています。[8][9]

ジュニパーベリーは果実ではなく、種子をつつむ球果です

ジュニパーは、ヒノキ科の針葉樹です。オックスフォード大学の植物図鑑によると、雌株につくベリーに似た肉質の種子球果が、熟すと紫がかった黒色になり、表面にろうのような粉がつきます。球果は、融合した3枚ほどの鱗片と種子でできています。見た目はベリーでも、植物学の呼び名は球果です。[2]

蒸溜所のHeadlandsも、コモンジュニパーの実は種子球果だと説明しています。円錐形ではなく、球形です。Difford's Guideによると、ひとつの実の中には種子が3つ入っています。EUの規則の条文も、この球果を berries(実)と呼んでいます。[3][4][1]

雄株と雌株は別々です。花粉は風で運ばれます。実がなるのは雌株だけです。アメリカ針葉樹協会は、コモンジュニパーの分布域を、北半球の冷涼な温帯に広がる、木本植物として最大の範囲だと書いています。[10][2]

産地、収穫期、熟成

Difford's Guideは、ジンに使うジュニパーの産地としてイタリア、セルビア、マケドニア、インドを挙げ、トスカーナとマケドニアの山の斜面のものが一般に最良とされるとし、The Gin Guildはマケドニア、セルビア、ボスニア、イタリアを挙げています。専門誌Distiller Magazineは、長くトスカーナのものが最良とされてきたが、近年は東地中海、とくにマケドニアとアルバニアのものが評価を得ている、と書いています。クロアチアについては、ジン専門サイトThe Gin Guideが、クロアチア産のジュニパーは世界の蒸溜所に使われていると紹介しています。[4][5][6][7]

収穫は秋から冬です。Difford's Guideは10月から2月に手摘みすると書き、The Gin Guildは9月から1月とします。幅があります。The Gin Guildによると、山の中で、棒を使って熟した実を篩に叩き落とします。熟していない実は翌年のために残し、集めた実は篩い分けて、乾燥させます。[4][5]

熟すには2〜3年かかります。Headlandsによると、1年目は花で、2年目に硬い緑の実になり、終わりごろから3年目に、濃い紫がかった黒になります。1本の木に花も未熟な実も熟した実も同時にあり、熟度はそろいません。一方、アメリカ針葉樹協会は、緑の若い球果が18か月で紫がかった黒に熟すと書いていて、数え方に差があります。[3][10]

収穫後にさらに寝かせる蒸溜所もあります。Difford's Guideによると、実を2年ほど貯蔵してから使う蒸溜家がいます。水分は減っても、油分は変わりません。DRINK PLANETの製品データは、タンカレー ナンバーテンのジュニパーベリーを、トスカーナ産で麻袋に入れて18か月寝かせたものと紹介しています。[4][11]

香りは、Difford's Guideが「フレグラントでスパイシー、ほろ苦い甘みがあり、松、ラベンダー、樟脳、熟しすぎたバナナを思わせ、胡椒のような余韻がある」と書いています。主な香味は精油で、アルファピネンやテルピネオール、樟脳だといいます。産地による違いについて、The Gin Guildはマケドニア産を「豊かで油っぽい」、イタリア産を「すっきりして新鮮」と書きます。[4][5]

野生採取の現状

ジンに使うジュニパーの多くは野生のものです。Distiller Magazineは、そう書いたうえで、自前で育てる蒸溜家もいると伝えています。ある蒸溜家は、需要の増加と、菌類に似た病原体Phytophthora austrocedrae の広がりへの懸念を理由に挙げています。[6]

英国では、コモンジュニパーが減っています。Wine Enthusiastの2024年9月の記事は、生育環境や生態系の変化で自然に世代交代しなくなったこと、病気で北西イングランドの群生が失われたこと、気候変動で南部の減少が進んだことを伝えています。多くの蒸溜所は、乾燥した実をイタリアやバルカン半島から輸入しています。一方、Beckett's Ginは2014年からサリー州ボックスヒルの野生の実を採っています。[12]

Decanterの2022年3月の記事は、英国で減った理由に、過放牧と放牧不足、違法なウイスキー蒸溜の燃料にするための伐採、菌類に似た病原体を挙げ、Hepple Spiritsが毎年およそ200本の苗を植えていると紹介しています。[13]

セルビアでは、栽培せず、野生の株から手摘みします。AFPの2026年4月の配信によると、セルビアは年間およそ1,000トンを輸出しています。記事は、西ヨーロッパの一部で収量が減るなか、バルカン半島が代わりの供給元になりつつあると伝えています。山火事は摘み取りを妨げ、煙が実に移るとも報じています。[14]

歴史と料理での使われ方

ジュニパーは、古い記録にも出てきます。Difford's Guideによると、1055年ごろの『Compendium Salernita』には、ジュニパーの実を浸したトニックワインのレシピがあります。1552年の『Constelijck Distilleer Boek』には、「genièvre」の最初の書面の証拠があるといいます。[15]

料理では、オックスフォード大学の植物図鑑が、雌株の球果をジビエ料理の風味づけに使うと書いています。[2]

Gin-Atlasの銘柄での使われ方

産地を公表している銘柄を見ると、出どころはさまざまです。シップスミスはマケドニア産で、ジンと名乗るために法律上欠かせない唯一の材料であり、ジンらしい松のような香りもここから来る、と説明しています。2026年9月時点で、サントリーはシップスミスのV.J.O.P.を、ジュニパーをロンドンドライジンの約3倍使った度数57%の一本と案内しています。京都蒸溜所の季の美もマケドニア産です。ボンベイ・サファイアはトスカーナ産で、骨格をつくる役です。モンキー47は、地元紙の報道では、クロアチアとトスカーナから取り寄せています。[16][17][18][19][20]

No.3 ロンドンドライジンはイタリア産です。ベリー・ブラザーズ&ラッドの取材記事で、ブライアント氏は狙いを「ジュニパー、柑橘、スパイス」の3系統の香りと語っています。サイレントプールのジュニパーはボスニア産とマケドニア産です。ボスニア産のジュニパーなど土台のボタニカルは、蒸溜器の中で24時間スピリッツに浸けます。ROKU〈六〉は、ジュニパーベリーだけを先に漬けて6時間蒸溜します。[21][22][23][24]

自前の実にこだわる例もあります。ジン・マーレは、一族がテルエルに持つ畑で手摘みする野生の実を使います。ザ・ボタニストのジュニパーは、Difford's Guideによればアイラ島に自生するものです。ブランドによると、長期の繁殖計画の一環として、採集者が野生のジュニパー60株の手入れをしました。[25][26][27][28]

ジュニパーベリーが出てくるコラム・ニュース

ジュニパーベリーを使ったジン

参考資料

  1. legislation.gov.uk(英国政府。EU規則2019/787 付属書I、採択時の原文)
  2. オックスフォード大学植物標本館(Plants 400 Juniperus communis)
  3. Headlands Distilling Co.(蒸溜所公式)
  4. Difford's Guide(gin botanicals)
  5. The Gin Guild(Ginopedia: Juniper)
  6. Distiller Magazine(Juniper)
  7. The Gin Guide(Croatian Gin)
  8. e-Gov法令検索(酒税法 第3条)
  9. 国税庁(酒税法基本通達 第3条関係)
  10. American Conifer Society(Conifer Database)
  11. DRINK PLANET(celori, inc.)
  12. Wine Enthusiast(2024年9月24日)
  13. Decanter(2022年3月29日)
  14. AFP配信記事(Taipei Times掲載、2026年4月26日)
  15. Difford's Guide(history of gin 1100s-mid 1500s)
  16. Sipsmith 公式
  17. サントリー(輸入元)ブランドサイト
  18. 京都蒸溜所(KI NO BI GIN 公式)
  19. Difford's Guide
  20. Schwarzwälder Bote(地元紙、ロスブルク版)
  21. Berry Bros. & Rudd
  22. Gin Foundry(2016年5月13日)
  23. The Gin Guild(イアン・マカロック紹介)
  24. WHISKY Magazine Japan(2024年7月29日)
  25. Difford's Guide
  26. Gin Foundry
  27. Difford's Guide(The Botanist Islay Dry Gin)
  28. The Botanist(公式サイト Sustainability)